CASE STUDY

CRM/MA基盤の再設計

使われていない基盤を、
使える形に作り直す。

導入から4年。投資は毎年続いていたが、経営が意思決定に使えるデータは出ていなかった。契約と利用実態を突き合わせ、支出を下げたまま中身を入れ替えた18か月の記録です。

業種
製造・小売業(専門性の高い製品)
規模
従業員 50名前後
期間
2023年10月 – 2025年4月(約18か月)
BEFORE

着手前の状況

複数の販売チャネル(対面・オンライン・卸)と、製造・教室運営など複数の事業を持つ企業。CRM/MAツールを導入して4年が経過していたが、経営が意思決定に使えるデータは出ていなかった。

基幹システムに部門別売上の内訳がない
オンライン販売の実績が実店舗の実績に混入している
商品コードが複数のシステム間で不統一
CRM上の売上と基幹システムの売上に、常時大きな差分がある
投資は毎年続いていたが、「どの部門が、どの商品で、いくら売っているか」に誰も答えられない状態だった。
PROBLEM

特定した問題

表面的な課題は「CRMが活用されていない」。実際に特定した問題は3層あった。

1

契約内容と利用実態が突き合わされないまま、更新が繰り返されていた。

社長からの問題提起をきっかけに精査したところ、年間コストの約半分を占める機能の実利用は、ごく限られた用途にとどまっていた。契約上の枠に対して、4年間、この照合が一度も行われていなかった。

2

入力が進まない原因は担当者の意識ではなく、二重入力の構造だった。

一方のシステムは業務上必ず入力されるが、もう一方は後回しにされる。同じ数字を2回打つ構造が残る限り、入力ルールを徹底しても解決しない。

3

データを整える前に機能を増やしても、使える状態にはならない。

商品コードが複数系統で不統一なままでは、どのツールを追加しても集計は合わない。

JUDGMENT

自分の判断

「見合っているか」を調べ、対比を示し、3つのフェーズに分けて提案した

コスト水準への違和感は社長から出た。それを受けて、各機能のコストと使用頻度を突き合わせ、対比が分かる形にした。あわせて、より安価な選択肢で要件を満たせることを確認し、提示した。その上で、契約の適正化を3つのフェーズに分けて設計した。

フェーズ内容判断基準
① 止血 使っていない機能を止める 機能の良し悪しではなく、現在の利用実績
② 整える 3か月でデータを整理する 情報の関連付け、対象範囲の絞り込み
③ 買い直す 必要なものを選び直して入れる 元に戻すのではなく、買うものを入れ替える

① 止血

内容
使っていない機能を止める
判断基準
機能の良し悪しではなく、現在の利用実績

② 整える

内容
3か月でデータを整理する
判断基準
情報の関連付け、対象範囲の絞り込み

③ 買い直す

内容
必要なものを選び直して入れる
判断基準
元に戻すのではなく、買うものを入れ替える
捨てたのは「せっかく契約しているのだから使い切ろう」という発想である。使う予定ではなく、使っている実績で判断した。第③フェーズで戻したのは、止めた機能ではなかった。問い合わせ管理とサイト構築という、別の機能を選び直した。同じものを小さく買い直すのではなく、実際に必要だったものを特定して入れた。

売上予測とシステム連携を、意識的に切り離した

基幹システムとCRMの売上差分について、入力ルールの徹底ではなくシステム連携による解決を選んだ。原因が構造にある以上、運用でカバーしても再発すると判断したためである。ただし当時、基幹システムの移行には複数の連携が重なり、全体をどう取り込むかは社内でも決まっていなかった。ここで2つの問題を分けた。

自分の担当

CRMに情報を集約して売上予測を作ること

別プロジェクト側の決定事項

その実績を基幹システムにどう投入するか

連携を前提にすれば、売上予測は他プロジェクトの決定待ちで止まる。そうせず、予測は予測として独立に動かせる形で設計した。連携については要件定義とデータマッピングまでを行い、接続可能な状態にして次フェーズに渡した。

ACTION

実施した11のステップ

PHASE ①

止血 — 契約と利用実態を突き合わせる

  • 01社長からの問題提起を受け、過去5年分の契約と支払いを一覧化し、コスト推移を可視化
  • 02利用実態を棚卸しし、契約している機能と実際の利用を突き合わせ。より安価な範囲で足りる可能性も確認し、経営判断の材料として提示
  • 03契約更新時に契約を縮小。必要な機能のみ継続し、使っていない機能を解約
PHASE ②

整える — データと予測の基礎をつくる

  • 043か月のデータ整備を実施(情報の関連付け、外部ツールとの連携)
  • 05案件見込み度スコアを設計し、パイプラインのステージ定義を刷新
  • 06基幹システムとCRMの売上差分を集計・分析し、未登録の所在を特定
  • 07経営連絡会議で、予算と予測のギャップを月次報告する形式を設計し、運用に乗せた
  • 08システム連携の要件定義・データマッピング・リスク整理を実施
PHASE ③

買い直す — 実際に使われる機能を入れる

  • 09問い合わせ管理機能を導入。代表アドレス宛の問い合わせを可視化し、対応が自動記録される仕組みを構築
  • 10サイト構築機能を導入。事業サイトを刷新し、独自ドメインを接続
  • 11社内向け勉強会を実施し、利用者への定着を進めた
AFTER

結果

契約は、金額を下げて中身を入れ替えた形で着地した。契約更新時点で、年間コストは当初更新予定額から大幅に削減された。削減した分は、失った機能ではなく、使っていなかった機能である。

その後、問い合わせ管理機能とサイト構築機能を追加した。支出は当初予定を大きく下回ったまま、中身は「使われていなかった機能」から「実際に使われる機能」に置き換わった。導入した機能は、社内勉強会を通じて定着しつつある状態で引き継いだ。

売上予測は、受注済と見込を分けた形で月次に乗った。予算に対する不足額が事業部単位で見える状態になり、基幹システムの決定を待たずに運用された。

見込み度スコアは営業担当者による入力を前提に設計し、その後の経営連絡会議における月次ギャップ報告の基礎データとして継続的に使用された。一度作って終わる仕組みではなく、月次の定例業務に組み込まれた状態で運用された。

そして、最初の診断がそのまま残った。着手初期に指摘した商品コードの不統一は、18か月後、全社のシステム移行が長期にわたり固まらない律速要因になっていた。着手時の見立てが正しかったことを、後の経過が裏づける形になっている。
RESULTS

数字

止血時点の削減
当初予定比約80%減

使っていない機能の解約による削減

再投資後の概算
当初予定額比約31%減

機能を入れ替えた上での数字

対象組織
従業員規模50名前後、複数の販売チャネル・事業を展開
期間
約18か月

※ 本事例に掲載する情報はすべて匿名化済みです。企業名・ツール名・具体的な金額は意図的に伏せてあります。

CAPABILITY

再現可能な能力

01

支払っているものと、使っているものを、並べて見る。

基盤まわりの問題は、高度な分析より、契約内容と利用実態を突き合わせるだけで見つかることの方が多い。難しいのは気づくことではなく、確認を実際にやることである。

02

動かない現場を、意識ではなく構造で説明する。

入力が進まない、ルールが守られない、という現象を担当者の姿勢の問題として扱うと、教育を強化して終わる。同じ数字を二度打つ構造が残る限り、それは繰り返す。

03

依存関係を切って、動く方を先に動かす。

大きなプロジェクトの決定を待つと、待っている側も止まる。切り離せるものは切り離し、後から接続できる形にして走らせる。

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