CRM/MA基盤の再設計
導入から4年。投資は毎年続いていたが、経営が意思決定に使えるデータは出ていなかった。契約と利用実態を突き合わせ、支出を下げたまま中身を入れ替えた18か月の記録です。
複数の販売チャネル(対面・オンライン・卸)と、製造・教室運営など複数の事業を持つ企業。CRM/MAツールを導入して4年が経過していたが、経営が意思決定に使えるデータは出ていなかった。
表面的な課題は「CRMが活用されていない」。実際に特定した問題は3層あった。
社長からの問題提起をきっかけに精査したところ、年間コストの約半分を占める機能の実利用は、ごく限られた用途にとどまっていた。契約上の枠に対して、4年間、この照合が一度も行われていなかった。
一方のシステムは業務上必ず入力されるが、もう一方は後回しにされる。同じ数字を2回打つ構造が残る限り、入力ルールを徹底しても解決しない。
商品コードが複数系統で不統一なままでは、どのツールを追加しても集計は合わない。
コスト水準への違和感は社長から出た。それを受けて、各機能のコストと使用頻度を突き合わせ、対比が分かる形にした。あわせて、より安価な選択肢で要件を満たせることを確認し、提示した。その上で、契約の適正化を3つのフェーズに分けて設計した。
| フェーズ | 内容 | 判断基準 |
|---|---|---|
| ① 止血 | 使っていない機能を止める | 機能の良し悪しではなく、現在の利用実績 |
| ② 整える | 3か月でデータを整理する | 情報の関連付け、対象範囲の絞り込み |
| ③ 買い直す | 必要なものを選び直して入れる | 元に戻すのではなく、買うものを入れ替える |
基幹システムとCRMの売上差分について、入力ルールの徹底ではなくシステム連携による解決を選んだ。原因が構造にある以上、運用でカバーしても再発すると判断したためである。ただし当時、基幹システムの移行には複数の連携が重なり、全体をどう取り込むかは社内でも決まっていなかった。ここで2つの問題を分けた。
CRMに情報を集約して売上予測を作ること
その実績を基幹システムにどう投入するか
連携を前提にすれば、売上予測は他プロジェクトの決定待ちで止まる。そうせず、予測は予測として独立に動かせる形で設計した。連携については要件定義とデータマッピングまでを行い、接続可能な状態にして次フェーズに渡した。
契約は、金額を下げて中身を入れ替えた形で着地した。契約更新時点で、年間コストは当初更新予定額から大幅に削減された。削減した分は、失った機能ではなく、使っていなかった機能である。
その後、問い合わせ管理機能とサイト構築機能を追加した。支出は当初予定を大きく下回ったまま、中身は「使われていなかった機能」から「実際に使われる機能」に置き換わった。導入した機能は、社内勉強会を通じて定着しつつある状態で引き継いだ。
売上予測は、受注済と見込を分けた形で月次に乗った。予算に対する不足額が事業部単位で見える状態になり、基幹システムの決定を待たずに運用された。
見込み度スコアは営業担当者による入力を前提に設計し、その後の経営連絡会議における月次ギャップ報告の基礎データとして継続的に使用された。一度作って終わる仕組みではなく、月次の定例業務に組み込まれた状態で運用された。
使っていない機能の解約による削減
機能を入れ替えた上での数字
※ 本事例に掲載する情報はすべて匿名化済みです。企業名・ツール名・具体的な金額は意図的に伏せてあります。
基盤まわりの問題は、高度な分析より、契約内容と利用実態を突き合わせるだけで見つかることの方が多い。難しいのは気づくことではなく、確認を実際にやることである。
入力が進まない、ルールが守られない、という現象を担当者の姿勢の問題として扱うと、教育を強化して終わる。同じ数字を二度打つ構造が残る限り、それは繰り返す。
大きなプロジェクトの決定を待つと、待っている側も止まる。切り離せるものは切り離し、後から接続できる形にして走らせる。
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